私が人間に求めるもの
自分の感情と向き合うには、日常生活には気を紛らわすものが多すぎる。
昨年末にモデルの事務所に所属して、何回かオーディションに落ちた後、特に手応えがあったわけじゃない大手企業のCMのオーディションに合格して出れることになった。
昨日今日とはじめてCMの撮影に行ってきたのだけど、新しい物事や文化、人に出会い、その中でよく知る感情にも出会い、という刺激の中で私の中にはその時々自分の中で何が起きていたのかじっくり向き合いたい欲求が生まれていた。
と同時に自分に向き合うことに必要な集中力のスイッチを入れることを先延ばしにしたりする。
朝5時に起きて14時に帰宅してから、昼寝したりなんやらかんやらで日付が変わって今に至る。
考えずにいられないのは内省資質だからなんだと思うのだけど、思った以上に生活の端々にその資質が良くも悪くも出ていることに、ふとシャンプーをしながら気付いた。
思った以上に、おしゃべりが苦手だ。
私をよく知る人はそんなことないように見えるかもしれないけれど、自分の中である程度考えて言語化できている感情や考えはそれなりに説明できる。
結果だからだ。それは、相手とのや対話の中で出てきたわけではないことが多い。
だから、お喋りしても、お喋り自体を楽しむことが出来ない。そこに発見はないわけだから。
会話に発見や気付きを求めるのは知的好奇心的とかそんな高邁なものではなく、ただ単に自分のことばかりに興味があるからなんだろう。
そこで気付いた。苦手なのは、対話ではなく考えないおしゃべりだ。
相手の言ったことを聞いて、その場で返答をする。
この時、私は相手の言ったことを噛み砕いて理解しようとするプロセスの中で、あー、とか、うーん、とかそっかぁー、とかしか出てこない。
反射的に、考えないで言葉を出すことも多分まるで出来ないわけじゃない。その代わり、いかに軽はずみなことを言わないようにするか、つまり相手を不快にさせないようにするかということを考えて返答するので基本的にはそうですよねぇとかそういうことありますよねぇとかっていう共感で終始することが多く、結果関係が深まらないってことがよくある。
多分、おしゃべりを楽しむ人たちはそんなこと考えていない。そこで起きる化学反応を楽しんでいるだけだ。
複数人でのお喋りに興味がまるで湧かないのは、その内容から気付きや発見を得ることが出来ないからというのと、ほとんどのお喋りは意味をなさないものだからだと思う。
複数人がテーマに沿って語る形式や、お互いのことを話す1対1の対話を好むのは、それをすることによって自分にない発想や考え方を知ることができるからだったのか。
それは、お互いに興味があることが前提となるし、同じ方向ないしは、互いを見ている。
わたしは誰かがわたしに興味を持ってくれたとわかれば嬉しい。語り合いたいと思う。
その興味の対象は、それぞれがどんな人間であり、日々何を見てどう感じているのかということだ。
新しい知識を得ることや学問が好きなのも、世界をどう見るかの手段だからなのかもしれない。
逆に言えばそれ以外のことには、興味がわかない。
何があったか、誰がどうしたか、そんなことはどうでもいい。わたしが聞きたいのは、あなたがそれを見てどう感じたかということだ。
そういうことを、話したがらない人もいる。
聞かれなくても上手に切り出す人もいれば、
それをモノやサービスやあらゆるものに形を変えて表現する人もいる。
だけど、相手のことをきいても、かわされてしまう感覚がある時もある。
そういう時、相手はかわしている自覚があるのかもしれないし、ないのかもしれない。
話したくないのかもしれないし、そもそもそんなことに興味はないのかもしれない。
どちらにしろ、その時点で、その人との通信手段を失ってしまったような気持ちになる。
わたしの最近の悩みはそれだ。人と繋がりたい、だけど人と繋がることが難しく感じる。
寂しく感じる時もある。でも、中身のない会話が宙に飛び交う空間にいるのはその100倍寂しい。
雑談が得意になりたいわけじゃない。だけど、私は私を理解してくれている、と思える存在が出来るだけ多くいて欲しいと感じているのだと思う。
きっと誰かとのお喋りで消化できていたら私はそもそも書いていないし、それを公開したりもしていない。公開するのは、誰かの心に触れて、繋がれることがあったらいいなと思うからだ。
言葉が不要なこと、それは音楽であり、アートであり、踊ることでもあるかもしれない。スポーツであり、セックスかもしれない。根底にあるのは、誰とも分かり合えない孤独を持つ人間が、それでも誰かとの繋がりを求めるゆえの営みとして作り出したものなんじゃないか。
物事は繋がってるからか最近歌を習い始めたのだけど、これがすこぶる楽しくて楽しくて仕方がないのも、そういう理由からだと思う。行き場のない根本的な寂しさを、音に乗せて飛ばしていくんだ。